■調査図書
 
建物現況調査を行う前に竣工図書、工事関係書類・図面に基づく
  書類調査を行います。
 
  竣工図書や工事関係書類・図面は竣工後の建物の維持・管理のために提出されますが、
  建物の計画から竣工までの経緯が確認でき、また、建物調査の段階では契約違反・不正
  行為の証拠となる重要書類でもあります。
  
  ただし、提出を受ける書類・図面として契約書や設計図面に記載しないと提出されない
  場合がありますので確認する必要があります。
 
  これらの重要書類を、建築主によっては、引渡書類は受領したが、工事関係書類や図
  面を受け取っていない場合やすべて受領したが散逸してどこに保管しているか不明と
  いう場合もあります。
 
  
  施工不良工事・杜撰工事などの技術的な問題以前の図面の差替え、無断変更など契約違反が行わ
  れており、また、工事関係書類・図面不足などで、調査のために仕上材の解体・撤去が行われる場合
  があります。
 
  設計者による建築主に対する説明不足によるトラブルがあります。
  相手会社を信頼して設計を依頼し、何度も設計打合が行われたが、契約用図面に打合内容の一部が
  反映されておらず、竣工してから、打合内容と異なる仕上、設備機器が取り付いている、約束が違うと
  いう場合があります。
 
  建築主が契約時の設計条件とした「耐震等級2」が確認申請の構造計算書では「耐震等級1」として
  設計され、工事が行われた建物があります。
  
  建築主は契約用の書類や図面の内容を確認しておりません。設計者は打合内容で設計図を作成し  
  たと説明しますが、打合議事録が無く、建築主の記憶とメモだけが存在します。
 
  契約違反や欠陥工事問題を少しでも防ぐため、また、建築紛争に対応するために、設計事務所や施
  工会社任せではなく建築主自らが確認し、自衛する必要がおきています。
  建築主は、工事契約を行う前に、設計者に要求・指定した仕様について、契約用図面を基に図面や
  模型、カタログやショールームで説明を受け、契約内容に間違いが無いかを確認し、
  また、着工後は定期的に設計監理者の報告を受け、現場の工事進捗状況の確認を行い、
  竣工時には竣工図書や工事関係書類・図面などを設計事務所や施工会社に要求することが必要です。
 
  ●建物欠陥調査で確認する図書
    工事請負契約書(契約約款・見積書・図面付き)、建築確認申請図面および構造計算書(確認通知書)、
    見積用図面、工事用図面、竣工図面、施工図面、設計打合議事録、工事打合議事録、設計変更指示
    書、施工計画書・施工要領書、試験結果報告書、工事工程写真・工事記録写真、施工会社による社内
    検査報告書、設計監理者による工事中の検査、竣工検査報告書などがあります。
 
  ●契約用図面の確定
    調査を依頼されると、はじめに契約図書関係から調べて、契約用図面を確定しますが、数種類の図
    面が存在し、契約用図面がどれか直ぐに確定できない場合があります。
    工事請負契約書に図面が綴られておらず、設計打合用図面、見積用図面、確認申請用図面、工事
    用図面、竣工図面など、設計仕様が異なる図面が存在し、建築主と施工会社双方が主張する契約用
    図面が異なるのです。
 
  建築主が承認していない変更工事
    構造に関して建築確認申請図面と異なる部材寸法、配筋量で施工が進み、竣工間際 に設計変更手
    続きが行われていたことがあります。
    また、工事中の定例会議における現場からの設計変更提案に対し、建築主が回答をせず、議事録に
    回答 記載の無い、また、設計変更指示書の無い状態で変更工事が行われていた場合があります。
 
  ●竣工図面と異なる仕様で施工が行われている。
 
  ●現況と異なる施工会社による施工不良工事調査報告書
    施工不良工事が判明し、建築主からの要求で行われた、施工会社による自主的な施工不良工事調
    査報告書に現況と異なるの内容の記載がなされている場合があります。
 
 
2009/5/10



HOME

お問い合わせメールはこちらまで